カテゴリー
プロフィール
植草一秀
経済評論家
スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長
名古屋商科大学大学院教授
直言の本
書籍紹介
ウエクサ・レポート 2006年を規定するファクター
『ウエクサ・レポート 2006年を規定するファクター』
最近のトラックバック
最近のコメント
直言リンク

« 第5回「日本の政治に一筋の黎明が見えた」 | メイン | 第7回「失われた5年-小泉政権・負の総決算(2)」 »

2006.04.26
第6回「民主党が提示すべき三つの主張」

 2006年4月23日は記念すべき日になった。千葉7区での衆議院議員補欠選挙で圧倒的優勢が伝えられていた自民党候補者を弱冠26歳の民主党女性候補が破り、僅差での当選を果たしたのだ。同時に実施された選挙で、山口県岩国市、沖縄県沖縄市、広島県東広島市で自民党推薦候補がそろって落選した。
 岩国市では、在日米軍再編に伴う米国海兵隊岩国基地への空母艦載機移駐問題に対する賛否が市長選の最大の争点になった。計画撤回を訴え続けた旧岩国市長が、自民党推薦で地域振興策と引き換えに移転賛成を示した候補者を大差で破り当選した。沖縄市では、野党の推薦を受けた沖縄米軍基地機能強化に反対する候補者が、自民・公明の推薦を受けた候補者を破って当選した。また、東広島市では、自民党政調会長中川秀直氏の二男が無所属から出馬したが落選した。
 昨年9月11日の総選挙で自民党は歴史的勝利を収め、小泉首相の独裁者的政治運営が続いてきたが、いよいよ潮流が大きく変化する時期が到来したようである。「満つれば欠くる」、「奢れる者は久しからず」がこの世の常である。メディア・コントロールに洗脳された国民もようやく目を覚ます時期を迎え始めた。
 民主党は昨年の総選挙大敗北の教訓を活かし、小泉政権の5年間を総括するデモンストレーションを展開してゆく必要がある。小泉政権が今回の選挙でも軽薄なパフフォーマンス選挙を繰り広げたのに対し、民主党の戦術は文字通り地に足をつけたものだった。
 4月7日に民主党新代表に小沢一郎氏が選出されると同時に、民主党では現状で考え得る最強の布陣が組成された。小沢一郎新代表を菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長が補佐するトロイカ体制である。「人間万事塞翁が馬」と言うが、メール事件で民主党の党勢が風前の灯火になったのが一転、民主党は力強いエネルギーを回復しつつある。メール事件は結果的に民主党に利を与える結果になったのではないか。
 小泉政権は政権発足からの2年間で日本経済に壊滅的なダメージを与えた。経済悪化を意図的に誘導する「超緊縮財政運営」と、企業の破たんを推進する「退出すべき企業を市場から退出させる」政策路線が小泉政権の政策の車輪の両輪だった。この政策を実行に移した結果、日本経済は順当に崩落した。マイナス経済成長、株価大暴落、大型倒産続発、経済要因での自殺者激増、金融恐慌の危機が日本中を覆い尽くした。
 金融恐慌の危機が現実に炸裂しなかったのは、小泉政権がそれまで掲げていた「改革政策」を全面撤回したからだった。2003年5月に「りそな銀行」を税金で救済したことは、小泉改革政策の明白な完全敗北を意味した。民主党が的確に事実認識していれば、この時点で小泉政権を消滅させることが可能だった。だが、民主党の国会での追及はまるで見当違いの方向に向かってしまった。
 財政運営でも小泉政権は、2001年度から2003年度にかけて結局、連続して大型補正予算編成に追い込まれた。小泉政権は昨年来の株価上昇をあたかも小泉政権の政策が成功したことの証のように説明することがあるが、完全な事実誤認である。小泉政権が掲げた政策の二つの柱をいずれも全面的に撤回し、辛うじて金融恐慌を回避できたのが実態である。
 民主党は小泉政権の政策の本質を白日の下に明らかにし、小泉政権の5年間を総括するとともに、政策の抜本転換を訴えるべきである。国民のなかには、小泉政権が言葉のうえで「改革」と連呼してきたために、「改革」が実行されてきたのではないかとの錯覚を感じている者が多数存在する。その感覚が「錯覚」であったことをわかりやすく示し、「真の改革」の姿を示す必要がある。
 筆者はかねてより、民主党に対して三つの提案を提示し続けている。第一は「郵政民営化」のまやかしを明示し、「真の改革」案を提示すること。第二は、「小泉改革」が意図して切り捨てている弱者に対し、弱者を確実に守る政策を明示すること。第三は「対米隷属」に堕している日本の外交スタンスを、「独立自尊」に転換することである。
 行政改革の真の標的は「天下り制度」である。2万6000におよぶ公益法人のうち6000ほどの団体に補助金が流し込まれている。こうした公益法人が「天下り」の温床である。補助金総額は5兆円にも達する。政府系金融機関に代表される「特殊法人」は役所にとって最重要の「天下り機関」である。こうした機関への「天下り」に加え、役所が影響力を保持している産業、企業への「天下り」も膨大である。こうした「天下り」が談合事件などに垣間見られるように、不正、非効率の大きな原因になっている。
 3月10日に国会に提出された「行政改革推進法案」では、小泉政権は「天下り廃止」にまったく取り組まないことを明示した。「天下り廃止」という「改革」の「本丸中の本丸」に取り組む考えを小泉政権は持っていないのである。この政策のどこをもって、小泉政権は「改革」などという言葉を恥ずかしげも無く多用しているのだろうか。
 小泉政権は公務員数の削減を提示している。地方行政を効率化して行政をスリム化すべきことは当然だ。しかし、国民はまじめに誠実に働いている、一般公務員の首切りと国民負担の上にあぐらをかく不当利得そのものと言える高級官僚OB「天下り」のいずれが問題と考えているか。不当利得の塊である「天下り」が問題だと考える国民が圧倒的に多いだろう。
 公務員には終身雇用を保証すべきである。公務員は市場経済の主役ではない。スポーツで言えば、フィールドの整備士であり、審判団である。第一種国家公務員といった少数の特権エリートを採用する必要は存在しない。第一種国家公務員制度を廃止し、公務員には公務員として定年まで仕事を完遂できる状況を整備して「天下り」を全面廃止すべきである。
 第二の論点も重要である。小泉政権は「改革」の美名の下に「弱者切捨て」の政策を積極推進している。「障害者自立支援法」などという詐欺に近い名称を冠した法律を成立させたが、「弱いものいじめ」以外のなにものでもない。高齢者の医療費負担増大政策が今国会で論議されているが、政治的弱者には容赦の無い冷酷無比な政策である。
 小泉政権が「頑張った人が報われる社会」と言ったときに、その成功事例として象徴的に掲げたのがホリエモンである。虚偽の決算数値を提示し、不当に利得を得てきた疑いがもたれている。「拝金主義」、「市場原理主義」、「弱肉強食」、「対米隷属」がその基本特徴といってよいだろう。
 民主党は「真の弱者に対する国家の責任」を政策の柱としてしっかりと掲げるべきである。「格差」が広がる現代経済のなかで、国民生活の安定、国民の幸福を達成するには、弱者に対する国家の責任ある対応が不可欠である。
 小泉政権の対米隷属、国益無視の政策スタンスには目に余るものがある。東京裁判にはさまざまな問題が存在するが、日本はサンフランシスコ講和条約第11条において東京裁判を受諾し国際社会に復帰した。このことを根拠とするアジア諸国からの意見には耳を傾けることが必要である。「対米隷属」から「独立自尊」へと政策の舵を大きく切りなおす必要がある。
 小沢民主党にはこうした基本事項についてじっくりと国民に主張を提示してもらいたい。最終判断は国民がしなければならない。国民は永い眠りから目を覚まし、重要問題に正面から向き合い、再考するべきである。2006年4月23日を境に日本が根ぐされの状況から立ち直ることを期待してやまない。

コメント

植草さんのご意見に賛成です。

民主党は植草さんをブレーンにし、日本経済のために協力を仰いでほしいと思います。

植草さんのご意見でとくに共感を覚えるのは、社会的弱者に対するスタンスです。

日本にはまだすぐれた人材がたくさんあるということを、植草さんの記事を読むとよくわかります。

これからも、頑張ってください。

植草先生の御意見はいつもわかり易く、平野先生の御意見同様非常に勉強になります。
宮崎先生、石井一昌先生など皆が力を合わせて、独裁政治を打破したいですね。

植草先生が仕組まれた事件から元気になられて
応援したい気持ちでいっぱいです。
とにかく、健康に御留意され活躍を期待しております。
いつか、若輩者の私も勉強を続け、微力ではありますが、皆様のお手伝いをできればと生意気なこと考えております。

これからも私達庶民のため、御活躍願っております。。。

いつも至極納得なコメント感心します
日本の未来を日本的な改革での方法での提案は傾聴に値するものばかりです。テレビに出ている二流経済人との差に驚くばかりです
私も微力ながら応援させていただきます

感銘を受けました
植草さん応援してます
頑張ってください

この記事へのコメントは終了しました。